よくある質問

Q1 素話と絵本はどちらが良いですか?

 両方とも良いですね。物の名前を覚える頃(1歳半頃)には絵本に描かれた犬を指して「わんわん」と言うことを喜びますね。どうぞその頃には絵本だけでなく、本物の犬と出会う機会も増やしてあげてください。物の名前を覚えることは生まれて初めての認識力です。それは本物と出会うことで生きた知識となります。

 また2歳以降になるとお話を聞いてそれを思い描く力も生まれてきて、素話を聞くことも楽しめるようになります。夜寝る前に布団に入ってお母さんが簡単なお話を語ってあげることから始めてみてはいかがですか。その時にはどうぞ、ゆったりとした呼吸で穏やかに語ってあげてください。上手に語るがどうかが重要なのではなく、子どもはお母さんの声を聞くことで安心します。字が読めるようになっても読んでもらえることは子どもにとってとてもうれしい事です。大人がたくさん読んであげてください。

Q2 子どもがスマホを触りたがる時は、どうしたらよいですか?

 まずは、少しの時間で良いので 一度スマホを置いて子どもと向き合ってみましょう。子どもは大人の真似をしてやってみたいのかもしれませんし、「お母さん、こっちを向いて!」といっているのかもしれません。

 そして、ご両親がスマホは子どもにはまだ早いからできるだけ触らせないようにしようというお考えであれば、「これはお父さんの大事なものね。」とできるだけ子どもの目に手に触れないところに管理しておかれるといいでしょう。すぐ手に取れるところに置いてあるのに「だめだめ」と言われることは、子どもにとってはつらいことです。そのためにも、ご両親でどうするかを話し合って決めることは大事です。お母さんが「触らない」と言ってもお父さんが「いいよ」と言うと子どもは二つの方向性の中で迷うことになります。

 シュタイナー教育では、子どもたちが将来的にはスマホやPCを操作し、使いこなしていくだろうと考えていますが、それだからこそ、乳幼児期には自分の身体を使って実体験をする機会がとても大事だと考えています。IT機器に関しては、年齢に応じた体験を積み重ねてうえで、使いこなせるようになることを目指しています。

 どうぞ幼いお子さんと一緒にいる時は、スマホを傍らにおいて、互いに目と目を合わせて話したり、同じ空間で共に過ごすことを大切にしてあげてください。

Q3 「同じ毎日が子どもには良い」ということですが、人見知りもなく、新しい場所や新しいことが好きな子の場合は、どうですか?

 それでも 毎日同じ繰り返しが良いとお勧めします。全く同じ日はないのです。小さな変化に気が付いたり、それを喜んだりすると、生活が数倍豊かなものになるでしょう。そして満足することを学びます。子どもは同じであることに喜びがあり、「やっぱり同じだった」と思えた時に安心します。安心は子どもが幼なければ幼いほど、重要な要素です。

Q4 どんなお人形がふさわしいですか?お人形に興味を持たない子はどうしたらいいですか?

 現実の人間の姿かたちからかけ離れていないものが良いです。お人形は幼い子どもにとっては自分自身を投影する存在です。赤ちゃんの時には柔らかくて感触のよい人形をずっと肌身離さず抱いていたりします。もう少し大きくなると、自分がお母さんにしてもらっていることを同じようにお人形をお世話するようになります。そしてお人形に名前を付け、遊び相手にもなります。遊び相手の時期は長く、4,5歳になると洋服を着せ替えたり、負ぶったり、抱っこしたり、寝かせたりするようになるので、洋服や紐、布、ベッドなど、お人形遊びに使える素材を用意してあげると喜んで遊びます。3歳頃までは男女の差なく、お人形で遊びます。またそういう存在が子どもには必要です。
人形に興味を持たないからと言って慌てることはありません。子どもの個性を尊重しつつ、まずは大人が人形を大事に扱う事から始めてみましょう。

Q5 手作りが苦手で劣等感を感じます。教育は良いと思いますが、手作りが苦手な親には不向きでしょうか?

 そんなことはありません。安心して下さい。大人が努力している姿は子どもにとり素晴らしい成長の栄養になるのです。はじめから上手くできなくても、やってみたいと思う気持ちがあれば、勇気を出して試してみてください。繰り返し繰り返しやると少しずつ上手くなります。

 また、シュタイナー教育=手作り ではありません。シュタイナー教育では小学生のカリキュラムに手仕事という時間があり、子どもたちは棒針編み、かぎ針編み、刺繍などを年齢に応じて行います。でもシュタイナー教育で大切にしていることは、私たちの手が何かを作り出したり、生活に必要な仕事をしたりするということを“認識すること”です。つまり料理、木工、掃除、洗濯など、とても幅広くとらえることができます。手仕事が苦手でも、その他の分野できっとご自分の手を使っているのではないでしょうか。自分が得意とすることを子どもと一緒にすることがいいと思います。また、得意でなくても一緒にやってみようという姿勢を持つことで十分です。

Q6 シュタイナー教育は「メディアを見せない」と聞きました。お友達の輪から外れないか心配です。

 シュタイナー教育では、幼い子どもは手に触れ、においを感じ、自分の身体で実際に体験することがその発達段階においては必要だと考えています。未来に生きる子どもたちは、パソコンなどの電子機器を操って仕事をするようになるでしょう。だからこそ、本物の世界を自分の感覚で知っておいて欲しいのです。子どもは年齢に応じて世界への扉が少しずつ開いて行きます。その発達に従って必要な経験をし、学んで身につけていくのがシュタイナー教育です。ですから、ただメディアを禁止するのではなく、その年齢の子どもが楽しいと思える体験をたくさんすることが重要です。幼い時に画面の前でただ受け身で座っている時間を多く過ごすより、自分の身体を動かして、創造的に遊べる時間を過ごすことができる方がより、自分自身の力を信じて生きていけると考えています。そして、子どもの心は柔軟です。メディアを見ていなくてもそれだけで仲間に入れないことにはなりません。子どもには共感する力があり、その場に会った柔軟な関わりができます。子どものすごいところだなと思います。

Q7 シュタイナー園では文字を教える時間などはないのでしょうか?

 7歳までは自分の身体をたくさん動かして遊ぶことを大事にしています。文字を書けるようになるためには手首が柔軟でなければ鉛筆を握って書くことはできません。また先生の話を座って聞くためには自分の身体がここにあることをわかってある距離感を持って、座っていられることが大事です。これらは乳幼児期に子どもの体の発達として育てておいてあげるべきことです。そのため、私たちは小学校に入って学ぶために必要な身体を用意しておいてあげることの方が必要と考えます。もちろん、子どもたちは7歳までに文字に興味を持ち、書いたり読んだりします。それを禁止する必要はありません。子どもは自分の身体を十分に動かせることができ、そこに文字への興味が生まれた時、自由に文字を書いたり読んだりできるようになることでしょう。親御さんが「早く教えないと遅れてしまうのではないか?」と心配になる気持ちもわかりますが、幼児期に大事な体験をした子ほど、学童期に入ると学ぶ意欲が高いです。子どもは本来、学ぶことが大好きですから、長い目で子育てをしていきましょう。

Q8 AI時代になり、小さなうちからデジタルに慣れておく必要があるのではないでしょうか?

 そうとばかりは言えません。デジタル機器は道具です。それを使う時期が来たら学べば充分です。遊びを通して自分と他者を知っていく幼児期は今しかありません。また、成長には段階があります。“今”を大事に過ごしたいですね。

Q9 シュタイナー教育はキリスト教の教育なのでしょうか?

 ドイツで生まれた教育ですから西洋のキリスト教文化の影響はあります。子どもへの宗教教育も大事にしています。けれどもキリスト教の信仰を育てるということではなく、どの宗教にも共通する大いなるものへの感謝、畏敬の念を育てることを大事にしています。

 それは子どもたち一人ひとり、友だち、両親、自然界など、全ての存在に対して愛と信頼に満ちた環境の中で育てられると考えています。

Q10 芸術的な子どもに育てたいです。音楽教室や絵画教室に通わせるのはよいでしょうか。

 子どもたちの遊びがすべて芸術性を持っています。遊びを通して作り出すもの、子どもが歌う時、自由に描く絵など。つまり幼い子どもにとっての芸術性は子どもが自由に表現する中から生まれてくるのです。どうぞ、子どもが自由に創りだすものに目をとめてあげてください。教室に通うことはもう少し大きくなってからでもいいでしょう。

Q11 小学校受験を考えています。シュタイナー教育は理想だと思いますが、両立は難しく葛藤があります。その中でも親が注意すべきことがあれば教えてください。

 生活の中でバランスをとっていく事が大切かと思います。幼い子どもは、自分の行動を場面によって選択したり、切り替えたりすることは、とても難しいです。受験用の塾と、幼稚園や保育園での生活の間に、大きなギャップがないかどうか考えてあげたり、工夫ができると良いかと思います。

Q12 保育園通いで、どうしても寝る時間が遅くなります。

 夜の時間をできるだけシンプルにすると良いと思います。また、帰宅してから眠るまでの流れが毎日同じにできるようにリズムを意識することも効果的です。日本の夕ご飯は豪華になりがちですが、幼い子どもの場合、そんなにたくさん食べなくても大丈夫です。食後にすぐ寝る場合もあるので、ごく簡単な献立ですぐに食べられ、お腹がいっぱいにならずに次の行動ができるものがいいでしょう。そして夜の時間はお父さんにもその流れを理解し協力してもらいましょう。

Q13 子どもが5歳になってからシュタイナー教育を知りました。それまで、良かれと思ってしていた早期教育が間違っていたのではないかと悩んでいます。なにか、取り戻す方法はありますか?

 大丈夫ですよ。その時にお母さんが「この子にとって一番大事」だと思って愛情を持って行ったことであれば間違いはありません。けれどもシュタイナー教育と出会って「これがいい」と思い、もしかしたら180度方向転換をしなければならないことがあるかもしれません。その場合はどうぞ、ゆっくりと少しずつ取り入れてください。幼い子どもにとって毎日の生活はとても大事なものです。急な生活リズムの変化や昨日あったおもちゃが今日はないというようなことにはすぐに対応できません。まず無理なく始められることを選び、ゆっくりと味わうように取り入れていければお子さんにとっても、お母さんにとっても無理がないのではないでしょうか。シュタイナー教育はとても実際的な教育です。丁寧に暮らす事の中に生きる力を培うエッセンスがあるように思います。台所の手伝いをしたり掃除をしたり洗濯物を畳んだり、お子さんができる家の仕事を一緒にしてみることからはじめるのが良いと思います。

Q14 子どもについ大声で怒鳴ってしまいます。良い叱り方があれば教えてください。

 怒鳴りたくなったときは まずは一呼吸置きましょう。ちょっと間を置いて3秒数えると、自分の中の感情がすーっと収まるのを感じます。感情的になると感情しか伝わらず子どもは何をすれば良いかがわかりません。

 例えば、お友だちを叩いた時は、その手を持って、「それはしないよ」と言ってあげましょう。幼い子どもはまだ身体が衝動と一体化していて、頭で認識して行動を起こすことはできません。だから、手を触ることで手が行ったことに対して「いけないよ」と言っているということを伝えることができます。足で蹴ったのならば足を触って止めます。つい大人は言葉だけで「駄目よ」と言ったり、どうしてダメなのかを延々と説明したりしますが、年齢に応じて、伝わる方法で諭すことが大事です。そして叩いてしまった子どもの側にも、理由があります。「おもちゃが欲しかった」「叩かれたから叩いた」「びっくりしたから叩いた」…まだ言葉にできない子どもにとって、身振り手振りは一つの表現方法です。それを理解して、「そう、嫌だったのね」とその理由をわかってあげて伝えられるといいでしょう。そのためにも、まずはお母さんが冷静になることです。

Q15 「なんで?なんで?」と色々と知りたがる年齢になりました。その時、夫はわからないことはスマホで調べて子どもに教えようとします。親と一緒に画面を見ることはいいですか?

 子どもは何を知りたいのでしょうか?図鑑に載っているような知識でしょうか。
求めている答えはスマホの中にあるでしょうか。
いいえ そうではありません。

子ども 「おひさまはどうして夜になると見えないの?」
大 人 「それはねえ。おひさまだって夜になると眠るんだよ。」

 時にはこんな答えも必要かもしれません。

 幼い子どもはファンタジー、想像の世界に生きています。電車ごっこをしている時、運転手さんになりきって運転をしていたり、パン屋さんごっこの時にはたくさんの積み木がパンになっていたりします。これは2,3歳頃から子どもの内側で豊かに想像が拡がる力が育ち、それが遊びを楽しむ源泉になるからです。先ほどの子どもの問いに「あれはね。地球が回って太陽が見えなくなったから向こう側に沈んだように見えるんだよ」と科学的には本当のことを話したとしても、子どもはピンと来ません。子どもの生きている世界にふさわしい、納得がいく返答をしてあげると良いです。子どもの生きている世界を理解して共に感じることから始めてはいかがでしょうか。