一般社団法人日本シュタイナー幼児教育協会

東日本震災関連情報
子どもに災害をどう伝えるか

2011年3月25日

■ 子どもに災害をどう伝えるか

文:丹羽博美

非常事態の中、子どもと話をし、心を支えるために災害について子どもにどう伝えるか、ショックやトラウマを受けた子どもの心をどう支えたらいいのか。大人自身が、そして社会全体が大変なときに、容易なことではありません。でも、私たちにできることはたくさんあります。将来を担う子どもたちのために、一緒にがんばりましょう。

  1. テレビを消しましょう

    必要以上にテレビでニュースを垂れ流しにするのはやめましょう。できる限り、他の情報収集手段を駆使し、子どもがいないところでニュースをチェックしましょう。大人には「同じ映像を繰り返し流しているなあ」と一目瞭然のことでも、子どもは、今も怖いことが続いて起こっているのかと受け止めます。また距離感が分からないので、危機を自分のごく身近なことと感じてしまいます。テレビからの情報で子どもがトラウマを受ける可能性を考慮して、慎重に判断しましょう。

  2. まずは安心させて

    子どもは様々な形で不安を表現します。甘えん坊になり何かにつけてぐずぐずしたり、一人で寝るのを怖がったり、逆に反抗的になったり。中にはお漏らしをしてしまったり、頭痛や腹痛を訴えるといった、実際に身体的な変化や痛みとして現れることもあります。たくさん抱っこしてあげたり、一緒に過ごす時間を大切にしましょう。そして、子どもがかけがえのない存在であることや、その子を守るために全力を尽くしている、といった、言わなくても分かっているだろう、当然のことも、ときにはきちんと言葉で伝えてあげることも大事です。言霊という通り、言葉にして伝えることにより、子どもにより強い信頼感、安心感を与えます。

  3. 子どものそのままを受け入れる

    子どもの気持ち、考え、疑問、反応、すべてをそのまま受け入れ、認めてあげましょう。オープンで受容的な雰囲気を作り、子どもが何でも話したいことや聞きたいことを表現できるようにします。しかし、まだ話したがらない子に無理に話させることは逆効果になることもあります。特に今の一瞬一瞬を生きている幼児の心は夢の中のように流動的で、大人のように記憶や感情を心に溜めていないこともあります。後述しますが、子どもは絵を描いたり、ごっこ遊びをしたりして、気持ちを表現し、心を癒していることもあるので、話すことだけにこだわらず、トータルに子どもを受け止める視点を持ちましょう。

  4. 子どもが質問してきたときが話をする一番いいタイミング

    幼い子どもに甚大な災害について話すのは容易なことではありません。でも子どもが聞いてきたとき、または、子どもが耳にした情報で怖がっているときなど、親としての勝負時という気持ちで、きちんと子どもに向かい合ってあげるべきです。人生で何度もない(あってはならない)重大事件であり、親子関係にとっても決定的瞬間のひとつです。子どもの性格や考え方、反応の仕方などを一番分かっている親が、真剣に心を込めて語ることが何より大事です。テレビまかせ、先生まかせでは子どもの不安が増大するばかりです。

  5. 細かい科学的説明や恐怖をあおるような視覚的イメージは避け、シンプルな叙述で

    大丈夫だと嘘をついたり、事態を無視・軽視するような態度は、子どもは直感的に偽りを感じます。事実をその子に分かる言葉で説明してあげましょう。子どもは天性の回復力、順応性、前向きな明るさを備えており、大人の想像以上に強い芯を持っています。その強さを信じて、真摯に向き合えば、必ず子どもは応えてくれます。

  6. 希望が持てるような終わり方に

    警察や消防隊員らが懸命に働いてくれているとか、県外・海外からも援助が来ている、みんなで力をあわせてがんばっている、というようなポジティブな情報を伝えて、ハッピーエンディングとは行かないまでも、落胆や恐怖よりも復興や希望に焦点を置いた終わり方にします。語る大人にも力を与えてくれるはずです。

  7. 何度でも繰り返して

    大人の話が分かりにくい、信じがたいという場合、繰り返し聞いてくる子どももいるでしょう。何度でも繰り返し答えてあげてください。同じ話を繰り返し語られることで安心し、少しずつ消化することができます。

  8. リズムを取り戻す

    お話に限らず、子どもはすべてにおいて繰り返しが好きです。大人も毎日の日課・習慣が崩れると不安が増し、体調にも影響します。可能な限りこれまでと同じリズムを取り戻しましょう。何がなくとも、おはよう、いただきます、ごちそうさま、などの挨拶だけはできます。生活が激変してすべてが流動的な場合は、朝に子どもと一緒に身体を動かす、食事の前にみんなで手を合わせる、黙想するといった新しい習慣を取り入れて、毎日繰り返すことでもリズムが生まれ、子どもが安心できる心の基地の役割を担ってくれます。嵐の海から見える灯台の灯りのように、私たちの心を導いてくれるでしょう。

  9. 子どもが遊べる場を

    子どもの仕事は遊びです。通常なら当たり前のことですが、非常事態の中、遊びなど考えもつかないかもしれません。前述のように、子どもは未消化の経験や感情を、絵に描いたり、ごっこ遊びとして繰り返して、表現することがあります。一時的でも遊びに没頭し、遊びきることにより、身体を動かし、気持ちを表現し、心身ともに平常の状態に近づけることができます。状況の許す限り、子どもが子どもでいられる時と場所を用意してあげてください。特別なものは要りません。その昔、石ころ一つで遊んだ遊びを教えてあげてください。紙と鉛筆があれば絵をかいてもいいよと渡してあげてください。

  10. 大人がお手本に

    子どもは真似をする生き物。大人を鋭く見ていて、そのまま真似をします。実際の行動もさることながら、大人同士の会話、心の持ち様まで、すべてです。だからといって、子どもの手前、取りつくろったり、無理に背伸びをせよというわけではありません。未曾有の災害に遭い、大人も恐怖や不安を感じながら、それでも希望を失わず立ち向かっている、そのままの姿に子どもは勇気づけられます。失敗もするし、後退することもあるけれど、人間として向上しようと精一杯努力を続ける大人の姿、それを子どもは手本として学び、栄養として育ちます。

    他にも、子どもと一緒にできる具体的な行動を起こす(募金をする、お手伝いをする、祈る)、悲しみや困難を乗り越える内容の昔話や勇気を題材にした童話など、お話の世界に浸らせてあげる、、、、などなど。親としての直感を信じ、勇気を持って行動してくださることを、子ども達の明るい笑顔が一日も早く戻ることを祈ってやみません。

丹羽博美

参考:執筆にあたり、下記の情報を参考にしました。

米国精神医学協会のウェブサイト

http://www.healthyminds.org/More-Info-For/Children/Talking-to-Children-about-Natural-Disasters.aspx

ニューヨーク大学精神医学科小児研究センターのウェブサイト

http://www.aboutourkids.org/articles/talking_kids_about_world_natural_disasters

Mr.ロジャース(教育者、アメリカで30年以上続いた子ども番組の製作者兼ホスト、作詞家)のウェブサイトhttp://www.fci.org/new-site/par-tragic-events.html

グリーンメドウウォルドルフスクール(米国ニューヨーク州)幼稚園教諭、アンドレア・ギャンバデラ先生にお話をお聞きして